MIAUへのお便り

http://miau.jp/1193380201.phtml

こんなメールをMIAUに送った。意見表明として載せておく。

はじめまして。
僕は10年前からデスクトップOSとしてGNU/Linuxを愛用しているネットワーカーです。

フリーソフトウェア*1をこよなく愛しています。フリーソフトウェアとはソースが公開されていて誰でも「自由に」(無料は二の次)使えるソフトウェアのことです。もちろん自由に修正したりコピーしたり再配布(GPLの場合ソース込みという条件つき)したりできます。今自分のPCで動いている主要なシステムはほとんどすべてフリーソフトウェアです。

フリーソフトウェア愛好家はなにより自由を好みます。使いづらい環境におかれているならば、使いやすくなるように自由に改善したがります。現に僕もフリーソフトウェアを開発したり、既存フリーソフトウェアのパッチ(改良)を送ったりしています。自分がそして他人が「より良く」生きるための活動です。
フリーソフトウェア愛好家は自由のきかない独占的ソフトウェアをとても嫌います。

さて、今回大問題になっているダウンロード違法化についてですが、フリーソフトウェア愛好家として言いたいことはいろいろあります。

まず、なぜストリーミングとダウンロードをいちいち区別したがるかということです。どっちにせよネットワークからPCへデータを転送していることには変わりありません。ディスクに保存されるかされないかの違いを指摘しているようですが、ストリーミングでも保存することができます。たとえばMPlayer*2では-dumpstreamオプションをつければ簡単に保存できます。同様のソフトウェアはたくさん存在するでしょう。また、ストリームプロキシサーバを立ててもキャッシュすることができます。だいいち、ローカルで保存しようがしまいがそんなことはPCを使っている人にしかわかりません。仮に保存する行為が違法になったとしても、どうやって取り締まるのですか?

なぜ保存するという行為にいちいち目くじらを立てているのかがわかりません。ネット上の動画を保存する理由は、

(1) また見たいと思ったときにはもうなくなっている可能性があるから
(2) ネットワークの負荷を抑えるため
(3) 遅いネットワークのため、再生中に途切れてしまうのが嫌だから
(4) ブラウザのプレイヤーよりも愛用しているプレイヤーを使いたいから
(5) 加工してMADを作りたいから

など人それぞれです。たしかに著作権侵害のため削除されている動画が出回ると困るというのはわかります。しかしそれは(1)しか見えていません。(2)についてはエコですね。ネットワークの負荷が多すぎるとつながりにくい人が出てきますから。僕の場合同じ動画を何回も見るのはとても稀なので(3)と(4)が保存理由です。キャッシュサーバにキャッシュさせて、ローカルでキャッシュされたFLVを好きなソフトウェアで見て(ブラウザの中で行えるよう設定しています)、キャッシュを削除します。ダウンロード違法化はソフトウェア選択の自由をも奪い取るのです!100歩譲って保存行為が著作権侵害だとしても、見た後に削除するのならば、著作権を侵害しているとは思えないです。

ビデオダウンローダ開発が違法ダウンロード幇助罪になってしまいかねない問題もフリーソフトウェアで活動する人にとっては由々しき問題です。ダウンロードする理由は人それぞれです。はっきり言って「包丁で人を刺す人が増えているから、包丁を作ったり売ったりすることは殺人幇助だ」と言ってるようなもので呆れてモノが言えません。

万一ダウンローダ開発・使用が違法になったとしても、YouTubeのように世界中で使われている動画サイトのダウンローダならば、開発する人が世界中にたくさんいます。youtube-dl*3などたくさんの実装があります。外国人が開発したダウンローダを使用するのも違法化するのでしょうか?

インターネットがらみの問題は、外国にサーバを置いてしまえば、国内法は手を出せませんね。結局、インターネットをひとつの独立国として法を制定したほうがいいのかもしれません。実在する国との決定的な違いは、世界中の人がインターネット国民であり、回線という「どこでもドア」がいたるところに存在することです。

これは余談ですが…

僕はこれまで何冊か書籍を執筆しました。音楽・映像との違いこそあれ僕も著作者です。僕の本が古本屋で売られた場合、僕に印税は一円たりとも入ってきません。しかし、悔いはありません。一人でも多くの人に手に渡ったのですから。僕の本が誰かの役に立つならば、著作者としてこれ以上の喜びはありません。
「古本屋や図書館があるから著作者に経済的損失が出ている。古本屋や図書館を違法化しろ!」なんて声は聞きません。ダウンロード違法化については、「古本屋や図書館」を「違法ダウンロード」に置き換えただけに感じます。図書館は便利なものでリクエストすれば希望の本が借りれます。
信じられないようですが、国内・国外問わず執筆者の中には、本の全文をPDFでネットに公開している人が何人もいます。もちろん無料です。それでも本は売れ続けるのです。

1: http://www.gnu.org/philosophy/free-sw.ja.html
2: http://mplayerhq.hu
3: http://www.arrakis.es/~rggi3/youtube-dl/